残穢


残穢 (新潮文庫)
残穢 (新潮文庫)
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小野 不由美
新潮社 (2015-07-29)
売り上げランキング: 1,163




~あらすじ~
ホラー小説作家の「私」は、読者からマンションの自室で起こるという怪奇現象について知らされる。そして、そのマンションでは、「垂れ下がった着物の帯が畳にこすれる音がする」「いないはずの赤ちゃんの泣き声がする」といった怪奇現象が多発していた。
「首吊り自殺した女性の霊がいるのではないか」ということが判明し、さらには、そのマンションの前に建てられていた家に住んでいた高野トシヱという人物が自殺していたことがわかった。また、周囲では、次々に嬰児を殺害・遺棄したという事件もまた発生していた。
「触穢」(穢れに触れると、その穢れが伝染するという考え)が原因であり、大本は福岡にある奥山家ではないかと「私」は考える。


以前日記に感想を書いた「鬼談百景」とリンクした作品。
読了して、「なるほど」と思わせる。
感想にて1話、「ぶらんこ」という話を載せたが、この話や、欄干から地獄が見える話、一見してぜんぜん関係ない土地で、ぜんぜん縁もゆかりもない人たちが、体験したちょっとした(?)恐怖体験が、思わぬ形でつながっていくのである。

まず、ネタバレになってしまうが、ホラー小説を主に書いている作家の「私」=小野不由美氏は、ある怪奇現象が自宅で起こっているという読者からの手紙を受け取る。その読者とは、30代女性の久保という編集プロダクションのライターであり、「岡谷マンションの一室」に住んでいた。そこで、「寝室として使っている和室で、箒(ほうき)で床を掃いているような音がする」と手紙には書かれていた。
「私」は、久保に連絡をとり始め、その中で「箒ではなく、着物の帯が床に擦れているような様子を見た」と明かされる。着物で首吊り自殺をした女性の幽霊がいるのではないか、と久保と「私」は考える。
「私」は、読者が体験した怪談話の手紙の中に、同様の怪奇現象が書かれていたことを思い出した。その読者は、屋嶋といい、久保と同じマンションに住んでいた。すでに屋嶋は転居していたが、屋嶋は401号室、久保は204号室であり、別の部屋に住んでいたことが判明した。
最初のうちは、久保も「私」にも霊感はなく、風の音ではないか、などと怪奇現象自体を科学的(?)に否定していたものの、同じマンションの別の部屋で起こるため(しかも別の部屋で、別の怪奇現象が起こったり、同様の怪奇現象だったり)仕事の合間に調査することにした。

「私」や久保は、まずマンション内で自殺者などを調べ始め、そこから徐々にマンションができる前の家を調べ始める。
調査の結果、小井戸が住んでいた土地は元々、高野家が住んでいたのだと判明する。そして、その高野家では、トシヱという女性が、娘・礼子の結婚式の日に首吊り自殺をしたのだという。

さらに遡ると、団地の建つ前には、吉兼友三郎という精神病患者が、座敷牢に閉じ込められていた(私宅監置と呼ばれる)。その友三郎もまた、家族への暴力や、自宅への放火を行っており、この奇妙な符合の一致に「私」は気づくのだった。また、次々に不幸が重なる吉兼家には、幽霊の絵が飾られていた。その絵は、吉兼家に嫁いだ三喜が実家から持ち込んだものだった。

「私」は、"震源地"が福岡にある三喜の実家・奥山家にあるのではないかと考える。三喜の父・奥山良宜は、炭鉱を経営しており、借金で火の車となったことをきっかけに、無理心中を図った。奥山家の炭鉱の跡地には、ラブホテルが建っており、心霊スポットとして有名であった。

「私」はこの調査を続けている段階で体調不良が著しく、久保もまた病院に通ったり…これが俗に言う「祟り」かはわからないが、「触穢」ではないかと考える。「触穢」とは、穢れに触れると、その穢れが伝染するという考えである。「私」や久保もまた、その穢れに触れてしまったのではないか、と恐れ始めていた。
「私」とともに調査をしている平山夢明氏(なんと実名で登場している)がいうには、まったく関係のない話が調べていくうちに同じ「震源地」だった場合は「根が深い」のだという。

ウイルスのように、震源地から、材木などを移動、人間が移動、そして「障り」を連れて行くことによって、どんどん枝分かれして、
それが本当に心霊かどうかはわからないが、不幸が続く。なんとなく「ヤバさ」を感じて手を引くと、現象は止まる。
そして、何かの折にまた全く関係のない話からここに繋がってしまう「縁」。

結局、久保も「私」も新居で快適に過ごし、「震源地」がわかったことで、この話から「手を引く」と、首の異変も良くなってきた。

これで終わりである。

実際、「霊」と戦うわけでも、お札を貼ってどうこうというような話ではない。
調査をして、調べていって、恐怖の元はこれではないかと自分たちで納得して、結局本当のところはどうだったのかというようなものは何もなく、主人公たちは日常に戻っていったというような話の展開である。
なのに、結局どうにもできないことで、多分、あのマンションに住む誰かは着物の帯のすれる音で悩まされる可能性、いずれ「縁」ができたことで、また全然関係のない話からここにたどり着いてしまう薄気味悪さが残る読後感であった。

決着がついてない終わり方だったため、尻切れトンボだったとかつまらないという感想もあったが、個人的には「鬼談百景」とあわせて読んで、それこそ「全く繋がらない話から、同じ震源地にたどり着いた主人公達」の気分を味わった。

映画化もするようなので、是非読んでみてほしい「新しいホラー」ではないかと思う。


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